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理想化された等身大の純愛:アニメ『月がきれい』レビュー(1)

こんにちは。ymtetcです。

今日から不定期で、テレビアニメ『月がきれい』(2017年春、監督:岸誠二)のレビューを書いていきます。


TVアニメ「月がきれい」番宣PV

今日はざっくりとした全体の感想を書いてみましょう。

〇理想化、普遍的、等身大、大人と子どもの中間

月がきれい』を一言で表現するなら、

極限まで理想化された、中学生の日常恋愛物語

です。ストーリーの展開やキャラクター設定はかなりデフォルメ・理想化されており、その点において、100%の”リアル”を描いた作品だとは言えません。でも、あくまで普遍的なものとなるように工夫が加えられた、等身大の純愛ドラマだと私は思います。

本作の特徴は、大冒険をしないことにあります。キャラクターも世界観もイベントも何もかも、手を伸ばせば届きそうな等身大のものとして描かれます

本作は、中学生の物語です。体育祭の用具係、部活の大会、友達と行く遊園地、お祭り、塾、受験、進学。これらは、大人から見ればありふれた通過儀礼の一つかもしれません。でも、中学生にとっては世界を揺るがすほどの大事件であり、大冒険なのです。

大人から見れば小さい、でも中学生から見たら大きいもの大人と子どもの中間にある10代の後半を過ごす彼らの大冒険こそ、『月がきれいなのではないでしょうか。そこに、例えば誰かが死んでしまうとか、世界が滅ぶといった、万人にとっての大事件は必要ありません。

受け手の気持ちに目を向ければ、”今この世界を生きている中学生が同じ経験をしているかもしれない”という感覚。これこそが、本作の最大の魅力です。例えば、私が中学生の頃にLINEはありませんでした。そうでなくても、私は彼らと同じ経験をしてはいません。それなのに、どこかで共感してしまうのは、本作で描かれている心の機微が、私の心がとても純粋だったころの記憶を呼び覚ましてくれるからに他なりません。

言葉にするのが憚られるほどの理想化された純愛を実直に描き抜くことで、一定数の人間が昔に持っていたであろう感情を炙り出そうとする。全てが等身大で普遍的で、でもリアルとは限らない、理想化された純愛ドラマ。月がきれい』は、純愛という美しさの中で、大人たちが忘れてかけていた感情を思い出させてくれるテレビアニメだと思います。

第1話:春と修羅

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