ymtetcの"アニメetc"ブログ

『宇宙戦艦ヤマト』以外の記録

描かれる大切な思い出たち:『のんのんびより りぴーと』鑑賞メモ

こんにちは。

テレビアニメ『のんのんびより りぴーと』(監督:川面真也)の鑑賞を終えましたので、メモを公開します。なお、鑑賞は2回目です。

〇鑑賞メモ

  • 第一話「一年生になった」

春、ピカピカのランドセルを貰った宮内れんげは、入学式前日に小学校へ通う練習に出かける。
そこへ越谷小鞠・夏海姉妹がやってきて一緒にバスで移動することに。
ところが学校に着くと「明日のお楽しみ」と、教室に入る事を禁じられてしまう。これから毎日通う事になる学校を一人探検するれんげだったが…。ちょっぴりの不安がありつつも、期待に胸を膨らます少女たち。まったりゆるゆるな田舎スクールライフが再びはじまる!

スタッフ
 脚本:吉田玲子   コンテ:川面真也   演出:川面真也   作画監督:井本由紀、古川英樹

メモ:れんげ回。「いい話」に重点を置く。一期を思わせるコメディシーン、絵や台詞は、「りぴーと」のりぴーとたる所以を示す。観客が立ち返る場所を描いたもの。それだけに、エンディングテーマの「おかえり」が心地よく響く。

  • 第二話「星を見に行った」

「旭丘分校」に転校してきて数日が経った一条蛍は、今まで通っていた学校とは違うところばかりで驚いていた。小学生、中学生が混在する教室での過ごし方も独特で、休み時間に「定規落とし」という遊びに誘われる。ルールを知らない蛍だったが、クラスメイトと次第にエキサイトしていき……。そして、初めての体験ばかりで喜んでいると、越谷小鞠から「今度星を見に行こう」と誘われる。はじめは皆で一緒に行くはずだったのだが…。

スタッフ
 脚本:吉田玲子   コンテ:二瓶勇一   演出:福多 潤   作画監督:本田辰雄、竹森由加

メモ:ほたる回。冒頭は一期と同じ場面を別角度から描き、ラストは一期の補完。「りぴーと」らしい。ほたるは新しい遊びを通して、「世界一あったかい春が訪れる場所」の一員になっていく。そして、一員としてのキャラ性「こまり推し」を確立する。一期でお馴染みの世界が、動き出す。

  • 第三話「連休中にやる気を出した」

ゴールデンウイーク前日に、やる気のない宮内一穂の声を聞きながらもテストを受けている「旭丘分校」の生徒たち。中でも越谷夏海はさっぱり出来なかったようで、休み時間にクイズ形式で次の教科の勉強をするのだが……。そして連休中に宿題を出された生徒たちは、宮内家に集まって勉強をする事になった。皆が来る前に、家の中でもぐーたらしている一穂を何とかしようとする宮内れんげだったが…。

スタッフ
 脚本:志茂文彦   コンテ:金崎貴臣   演出:平田豊   作画監督:堤谷典子

メモ:れんげ回か。シュール系コメディ要素の多い回。れんげが真理を突き続ける場面が面白い。反面、静かなシーンもあり、緩急が効いている。

  • 第四話「てるてるぼうずを作った」

入学祝でおばあちゃんから自転車を貰った宮内れんげは、みんなで一緒に自転車に乗って遊びに行けると楽しみにしていた。早速乗る練習をしようとすると雨が降り出して来た。季節は梅雨、なかなか雨が止まないのでてるてるぼうずを作り始めたれんげだったが……。そして、以前田んぼの中で捕まえたカブトエビを気に入ったれんげは、カブトエビ当番として教室で飼う事になり張り切っていたのだが…。

スタッフ
 脚本:吉田玲子   コンテ:川面真也   演出:福多 潤   作画監督:冨田康弘、北川和樹、塚本歩、吉田和香子

メモ:れんげ回。れんげがカブトエビの命と向き合う。れんげの心情がずんとくる。れんげの感情の幅を広げる回。友情が染みる。なつみがかっこいい。いい話の後は、「おかえり」がとても優しく聞こえる。

ある朝、越谷夏海がおもちゃのおみくじを使って姉の小鞠の運勢を占うと「凶、水に注意」という結果が出た。小鞠は、特に水の近くに行く事もない。と気にしないようにしていたのだが、学校で宮内一穂に「今日はプール掃除を行います」と告げられて……。翌日、創立記念日で平日休みの越谷姉妹は暇を持て余していた。夏海はまた小鞠の運勢を占おうとおみくじを振ると、再び凶が出て…。

スタッフ
 脚本:志茂文彦   コンテ:黒澤雅之   演出:平田 豊   作画監督佐々木睦

メモ:4人で楽しむ回。プール掃除をして遊んでお好み焼きを食べる、とにかく平和な回。おみくじと、こまりに襲いかかる災難がキャラを動かす推進剤になっている。

  • 第六話「ホタルと仲よくなった」

学期末の大掃除の日、越谷夏海は一条蛍と共に菜園の雑草取りと水やりの担当になった。夏海はふと、蛍と二人きりになることがほとんど無かった事に気付き、何を話せばいいのか分からなくなる。とっさに様々な話題を振る夏海だったが……。そして夏休みに入り皆で宿題を始めた旭丘分校の生徒たちだったが、早速飽きてしまう。そんな中、蛍の親が花火を買ってきてくれると聞きテンションの上がる一同だったが…。

スタッフ
 脚本:吉田玲子   コンテ:澤井幸次   演出:澤井幸次   作画監督:本田辰雄、竹森由加、木下ゆうき

メモ:他者としてのほたる回。「釣り」と「花火」の全く異なるエピソードを「ほたる」で回収する。大人たちが頑張る回でもある。いい話。

  • 第七話「思い切って飛び込んだ」

田舎の遊びにも徐々に慣れてきた一条蛍だったが、橋の上から川に飛び込む遊びは怖くて出来そうになかった。秘密基地で遊んだあと家に帰ると、東京にいた時の友だちから手紙が届いていた。その中には皆で行った遊園地の写真が入っていて蛍は懐かしい気持ちになり…。宮内家ではひかげが実家に帰省しており、東京タワーの写真を妹のれんげに自慢していた。

れんげは最近写真に凝っていて撮りに行きたいと頼むのだが…。

スタッフ
脚本:吉田玲子   コンテ:錦織 博   演出:福多 潤   作画監督:竹森由加、本田辰雄、吉田和香子、八代紀実子、橋口隼人

メモ:素晴らしい回。いい話。「東京」と対置される旭丘。ほたるが旭丘の一員になったことを確認する回。「写真に凝ってる」は一期ネタ。ほたるが川に飛び込むのもそれ自体が一期ネタ(OP)か。「りぴーと」の「りぴーと」たる回。素晴らしいの一言。

  • 第八話「給食当番をした」

二学期が始まり、授業で木の板を使って工作をすることになった旭丘分校の生徒たち。宮内れんげと越谷夏海はペアを組んで何を作ろうかと悩むのだが、なかなか思いつかない。焦り始める夏海に対し、余裕のれんげが独特の感性を発揮して作り始めた物は……!そして給食の時間になり、カレーの匂いが漂ってきた。給食当番のれんげとカレーの組み合わせを見て、越谷姉妹は過去に起きた凄惨な出来事を思い出すのだった。

スタッフ
 脚本:吉田玲子   コンテ:二瓶勇一   演出:あべたつや   作画監督:橋本純一、しまだひであき、横山沙弓、吉田巧介

メモ:素晴らしい回。いい話。みんなの過去が見られる。過去から今を照らす。キャラクターへの愛着がぐっと深まった回。安心感さえ覚える。メインの物語はれんげ(工作)とこまり(ぬいぐるみ)かな、と。でもみんなよかった。駄菓子屋もこのみもよかった。『のんのんびより』世界への愛着も深まったかもしれない。

  • 第九話「みんなでお月見をした」

越谷夏海は母の雪子より「庭の池に生き物がいないのが寂しいので何か捕まえてきてほしい」と言われ、お小遣い欲しさに引き受ける事にした。門限までに帰ってくるようにと、母から渡された腕時計を付けて皆で魚釣りをしに出かけた夏海だったが……。そして、中一になっても女の子らしくない夏海を見た富士宮このみは、自宅から中学の時に着ていた服を持ってきて夏海に女の子らしい格好をさせるのだが…。

スタッフ
 脚本:志茂文彦   コンテ:黒澤雅之   演出:池端隆史   作画監督大塚舞、木下ゆうき、本田辰雄、八代きみこ

メモ:お月見回。失敗をコメディとして描く。色々なキャラを出す回でも。「楽しみにしていたこと」が奪われる第六話で観たような展開も、今回はコメディチックに終える。ひかげがいい。

  • 第十話「すごく練習した」

越谷家に遊びに来た宮内れんげだったが、越谷姉妹は不在の様子。諦めて帰ろうとした時、塀の向こうからひらひらと動く手が話しかけて来た!妖怪だと勘違いしたれんげだったが、隣に住んでいる富士宮このみだと分かってひと安心。ところが「わたし、妖怪だよ?」と、このみが言い出して……。そして帰ってきた越谷姉妹から、自転車の補助輪を外したのは小学1年生頃だったという話を聞き、れんげも補助輪なしで練習を始めるのだが…。

スタッフ 脚本:吉田玲子 コンテ:澤井幸次 演出:澤井幸次 作画監督:塚本歩、保村成、吉田和香子

第十話 | TVアニメ『のんのんびより のんすとっぷ』公式サイト

メモ:素晴らしい。駄菓子屋とれんげの回。自転車の練習。道徳の教科書。れんげは天才。大人もかっこいい。れんげの成長を描きつつ、これからもそれを見守る大人の永遠を切り取る。れんげ、まだまだ伸びそう。頑張るれんげの表情を楽しむ回でもある。れんげ推しにとっては「神回」なのでは。

  • 第十一話「甘えんぼうになった」

冬休み、一条蛍と越谷小鞠が歩いていると朝練帰りの富士宮このみがやってきた。このみが持っている携帯電話に興味津々の小鞠だったが、電波の届く場所がこの付近にはこのみの家の庭にしかないという。そこでこのみがメールをしている様子を見て小鞠も挑戦したのだが……。一方、宮内家では宮内れんげが年賀状を描いていた。姉の宮内ひかげは、れんげが何を描くのか気になりのぞき見ようとするのだが…。

スタッフ 脚本:山田由香 コンテ:金崎貴臣 演出:高村雄太 作画監督:Cha Myong Jun

第十一話 | TVアニメ『のんのんびより のんすとっぷ』公式サイト

メモ:素晴らしい回。天才れんげ、甘えるほたる、お正月回。さりげなくお正月料理を作っているところがいい。さりげない描写は大切。れんげの天才ぶりは本当に面白い。コメディ、ほっこり、実家感のバランスがいい。

  • 第十二話「一年がたった」

春休みにうさぎのエサやりに学校へやってきた宮内れんげと一条蛍は、忘れ物を取りに教室に向かった。その途中で見つけた木の棒は、れんげが入学時に持っていた「伝説の剣」だった!一年が経ったんだね。と感慨深い蛍は、れんげにタケノコを採り行こうと誘われて皆で一緒に行くことに。 春の息吹を感じながら、タケノコを採ったり秘密基地で遊んだりお花見をしたり…。いつもまったりゆるゆるな毎日です。

スタッフ 脚本:吉田玲子 コンテ:川面真也 演出:福多 潤 作画監督:井本由紀、古川英樹、本田辰雄、橋口隼人、竹森由加

第十二話 | TVアニメ『のんのんびより のんすとっぷ』公式サイト

メモ:素晴らしい最終回。一期最終話と繋ぎながら、「りぴーと」の過ごしてきた一年をつないでゆく。カメラを固定して、キャラクターを出し入れする演出(専門用語があるはず)がよい。高いところを怖がらないほたる、もう一人じゃないバス(一人席は空席)。年齢を問わず全力で向き合えるなつみが、この四人の要なのかもしれない。たけのこ、お花見、桜餅。最後は四人で。ラストの主題歌の繋ぎは完璧。ここで終わってもいいんだ、というスタッフの熱意を感じる。全24話の集大成。きっとこの世界は、いつまでも続く。

〇感想

一昨年に鑑賞したきりの『のんのんびより』シリーズをもう一度鑑賞しようと思ったのは、『のんのんびより』とは一体何なのか? を自分なりに考えたかったからです。

のんのんびより』は、ほのぼのとした描写とシュール系コメディ要素、そして観客をほろりとさせる「いい話」の三つの要素からなります。

公式サイトの「イントロダクション」を見ても分かるように、

「彼女たちの新しい季節の楽しみ方に触れ、子供の頃の懐かしさを再発見できるかもしれません…。」(『のんのんびより』)

「穏やかで何気ないけれど、笑えて、ほろっとして、心があたたかくなる。そんなゆるやかでやさしい時間が再びはじまります。」(『のんのんびより りぴーと』)

「のどかでいつも通りだけど、くすっときて、ちょっぴり沁みて、心がほっこりする。まったりゆるゆるなメンバーが送る日常が、またまたはじまります。」(『のんのんびより のんすとっぷ』)

イントロダクション | TVアニメ『のんのんびより のんすとっぷ』公式サイト

のんのんびより』とは、笑えて、泣けて、温かい日常を描く作品なのです。

ただ、個人的に、「日常」との表現には違和感を覚えています。私の中では、「日常系アニメ」はもっと舞台が固定されているもの、というイメージがあるからです。例えば学校をベースにして、学校で起きている「日常」のあれこれを描く。そんなイメージです。

のんのんびより』の場合、登場人物の住む地域は固定されていますが、その中でも様々な場所が舞台になります。もちろん学校やキャラクターそれぞれの家などは頻出ですが、彼女たちは日々、自分たちの遊ぶ場所を選んで行動し、それによって物語が動いていきます。家、川、田んぼ、駄菓子屋。「遊びに行こう」「どこに行く?」。そこにあるのは、ルーティン化された「日常」ではないのです。

私は、『のんのんびより』とは「思い出」の物語なのだと考えています。「懐かしさを再発見」と第一期のイントロダクションにありますが、この懐かしさの正体こそ、本作を根底から支える「思い出」なのです。

例えば、今回引用した各話の「すと~り~」を読むと、『りぴーと』はおおむね

  • 入学式、転校生(4月)
  • ゴールデンウィーク(5月)
  • 梅雨(6月)
  • プール開き、学期末(7月)
  • 夏休み(8月)
  • 二学期、お月見(9月)
  • 冬休み(12月~1月)
  • 春休み(3月~4月)

と、季節ごとのイベントを網羅していることが分かります。朝起きて学校に行って授業を受けて宿題をして……といった、春も夏も秋も冬も変わらない「日常」は、ほとんど描かれていません*1

これは、いわゆる「日常」とは一線を画したものだと考えます。

日常/ほのぼの系アニメは数あれど、誰かの「思い出」に触れ、それを追体験し、アルバムの1ページを増やしていくような感覚にさせてくれるアニメは少数派なのではないでしょうか。『のんのんびより』は、そんなアニメの代表作なのです。

〇『のんすとっぷ』へ

現在、2021年の冬アニメとして、新作『のんのんびより のんすとっぷ』が放送されています。原作の完結が既にアナウンスされていますので、アニメの方もある程度、終わりを見据えながら作られていくのではないかと思います。そうでなくても、各シーズンごとに最終話で”集大成”を見せてくれたシリーズですから、今回も最終話はきっと感動的で、少し寂しくさせてくれるものになるはずです。

のんのんびより』最終話の寂しさは、どこか、アルバムの最後のページを閉じる時の感覚に似ています。少し寂しいけれど、とても前向きな感覚。耐えられないほどに寂しくなったら、また開けばいいのです。

「何気ないおもいでは 明日にまく種 ひとりぼっちのとき咲いて 光の花束をくれるもの」

『のんすとっぷ』のエンディング主題歌「ただいま」の一節は、『のんのんびより』が持つ魅力を見事に描いた歌詞だと思います。

<『のんのんびより』第一話>

転校生が来た

転校生が来た

  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: Prime Video
 

<『のんのんびより りぴーと』第一話>

一年生になった

一年生になった

  • 発売日: 2018/07/27
  • メディア: Prime Video
 

*1:なお、『りぴーと』では遠く離れた東京に住んでいるひかげが頻繁に登場します。それはひがけが帰省している時期(夏休みや冬休み、春休み)を舞台にしたエピソードが多いからだと言えます。